○特別区議会議長会、国に対し要望活動を実施
令和8年度の国の施策及び予算に関し、9月9日に特別区議会議長会渡辺ゆういち会長(品川区議会議長)田中しゅんすけ副会長(板橋区議会議長)ただ太郎会計監事(足立区議会議長)が財務省を訪問し、要望活動を行いました。また、9月10日に国土交通省、11日には総務省を会長、会計監事が訪問し、要望活動を行いました。
要望内容は、各区議会議長から提出された項目を基に、7月の議長会総会で決定されたものです。
●財務大臣への要望
土田慎財務大臣政務官と面談し、地方税財源の充実強化、下水道等、インフラの保全と老朽化対策の強化の2項目を要望しました。
土田政務官からは地方消費税等の話をいただいて財務省としてもやはり地方の行政は、その地方の財源でやるというのが柔軟性の意味も含めて適切と認識している。その流れもあって、消費税を上げたときの地方消費税の配分についても様々な議論があった。消費税をこれからどういう配分に変えていくのか、これは引き続き、総務省とも議論をしていかないといけないと思っている。
下水道のところで、八潮は3月18日に閣議決定した予備費を使って緊急調査と緊急改築を行った。この6月に国土強靱化実施中期計画で、これから5年にわたって20兆円規模で、国土全体の強靱化をしていくという中で、この下水道の問題、維持管理そして、布設替えところも含めて非常に大事なので、国土交通省と協議をして予算もつけていきたいと思う。この下水道管の布設替え等については、地方とか都市部は関係ないので、ここはしっかりやっていきたいと思う。等の発言がありました。

土田大臣政務官に要望書を手渡す渡辺会長(中央右)、田中副会長(左)、ただ会計監事(右)
●国土交通大臣への要望
古川康副大臣と面談し、下水道等、インフラの保全と老朽化対策の強化、航空機の安全確保、鉄道の連続立体交差化事業の一層の推進の3項目を要望しました。
古川副大臣からは、鉄道の連続立体交差事業というのは都市部、とりわけ東京都に非常に関係した事業で、こうして特別区議長会からも、ご要望いただくというのも、大変こちらとしてもありがたいことだと思っている。これについては、基本的に個別の補助ということで進めているので、必要な事業に合った形の予算の確保というものをしていかなければならないと思っている。全国的に連続立体交差事業は40か所ぐらいあるが、やりたいという場所が非常に増えていて、そのこと自体は非常にありがたいと思ってはいるが、それに見合っただけの予算を確保するというのが大変な状況になっている。できる限り皆様方の思いに応えられるように、しっかり努力をしていきたいと思っている。等の発言がありました。

古川国土交通副大臣に要望書を手渡す渡辺会長(右)、ただ会計監事(左)
●総務大臣への要望
阿達雅志副大臣と面談し、ふるさと納税制度の見直し関する要望を行いました。
阿達副大臣からは、お世話になった自治体に対して何らかの貢献ができないか、という中でふるさと納税制度が作られたが、ご指摘のとおり行き過ぎた部分について見直しも必要だし、ポイント還元の変更など、制度的に揺れ動いている部分があるのは事実である。ただ、制度的な枠組みの部分で、地方間で調整していているものに対し、国が補填するというような形で入ることができるかというと難しい問題もあるかと思う。そのような中で、ご紹介いただいた全国連携プロジェクトなどの動きは、これ自体が東京と地方とを調整するということになるため、ふるさと納税制度を見直す時の一つのてこになり得る感じはする。是非またしっかりと議論をさせていただきながら、よりよい制度にというご趣旨はよく承った。等の発言がありました。

阿達総務副大臣に要望書を手渡す渡辺会長(左)、ただ会計監事(右)
そのほか、以下のとおり要望書を郵送し提出しました。
- 1.厚生労働大臣あて
- 国民健康保険事業の抜本的見直しを求める要望等の2項目
- 2.内閣府特命担当大臣(防災)あて
- 災害発生時における行政施設や避難所等での通信体制の強化を求める要望
- 3.内閣府特命担当大臣(共生・共助)あて
- 聞こえの支援を必要とする人への積極的な支援を求める要望等の2項目
1 ふるさと納税制度の見直しに関する要望
提出先:総務大臣
ふるさと納税制度は、地方自治体の財源確保や地域活性化のみならず、被災自治体の復興支援に寄与する重要な制度である。一方で令和6年度の特別区全体の減収額は、900億円を超え、東京都全体では約1,900億円に上るなど、区民の生活や行政サービスに直接的な影響を及ぼす深刻な課題となっている。
地方交付税の交付団体に対しては、ふるさと納税による減収額の75%が国から補填されるが、東京都及び特別区は、令和6年度で1兆8,422億円が財源超過と算定され地方交付税の交付対象から除外されている。しかし、これは交付税を配分するための物差しで測定した理論上の値であり、都民のために使われるべき税金が、ふるさと納税及び地方交付税という二重の仕組みにより他の自治体に分配されていると言わざるを得ない。
また、ふるさと納税制度は、より多くの寄附金を集めるために自治体間で返礼品競争が続いており、ふるさとや応援したい自治体に対して、経済的見返りを求めない寄附を促すという本来の趣旨に適った制度となっていない。さらに、返礼品調達費用や仲介サイト手数料などの経費が生じ、寄附先の自治体が財源として活用できる額は寄附額の5割程度にとどまっている。加えて、ワンストップ特例制度により、本来は国に納められる所得税から控除されるべき金額が住民税から控除されるため、地方自治体の財政負担は一層大きなものとなっている。
住民税は、自治体が行政サービスを提供するために必要な経費を賄うものとして、その地域の住民が負担し合うものであるが、現状のふるさと納税制度は、この受益と負担という地方税の原則に合致しない制度となっている。
よって、制度の公平性を確保し、特別区と他の地方自治体が共に持続可能な発展を遂げられるよう、以下の事項について要望する。
- 1 ふるさと納税制度の本来の趣旨に沿った見直しを早急に行うこと。
- 2 ふるさと納税による減収額が大きくなっている特別区に対して、抜本的な見直しが行われるまでの間、特別区税の減収を補填するような交付金や補助金などの財政支援策を導入し、安定的な財源を確保することができるようにすること。
2 下水道等、インフラの保全と老朽化対策の強化を求める要望
提出先:財務大臣
国土交通大臣
下水道は、安全・安心で快適な住民の生活や活動を支える必要不可欠なインフラとして重要な役割を担っている。昨今、整備年代の古い時代に造られた下水管や雨水管の老朽化、排水施設の劣化、侵入水による地盤の浸食等が原因と見られる道路陥没が増加しており、国土強靭化の一環として対策を強力に推進する必要がある。
令和7年1月28日には、埼玉県八潮市内の県道において下水管の老朽化による破損に起因したと思われる陥没が起き、走行中のトラックが転落する事故が発生した。
この事故を受けて設置された専門家による委員会の提言を受け、国土交通省は一定の大きさ以上の下水管を対象とした全国調査の実施を決定し、自治体に調査を要請した。高度経済成長期以降に集中整備された大量のインフラが更新時期を迎えることが社会的な課題となっている中で、平成27年施行の改正下水道法で義務付けられた5年に1回以上の定期点検だけでは、同様の道路陥没事故を未然に防ぐことは困難であり、特に特別区のような地方交付税交付金不交付団体においては、国からの財政的・人的・技術的支援が必要である。
早急に現状の耐用年数や維持管理基準、今後の流域下水道の在り方などを見直し対策を講じ、生活の安心と安全の確保に向けた取り組みを進めることができるよう、以下の事項を要望する。
- 1 道路陥没事故の未然防止対策を推進するため、次期国土強靱化実施中期計画に下水道の強靭化を盛り込み、必要な予算を確保すること。
- 2 下水管の老朽化対策を促進するため、老朽化対策に資する新たな交付金制度を創設するなど、財政的支援を行うこと。
- 3 現行の国庫補助における配分割合を増加すること。
- 4 道路や地下インフラの定期的な点検・調整を国費で支援すること。
- 5 自治体への人的・技術的支援を最大限行うこと。
- 6 自治体の意見を十分に踏まえ、下水道等、インフラの保全と維持管理を重要な施策として位置付け、そのために必要な予算を確保すること。
3 地方税財源の充実強化を求める要望
提出先:財務大臣
「地方創生の推進」と「税源偏在是正」の名のもと、法人住民税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税等の不合理な税制改正が行われ、特別区の貴重な税源は一方的に奪われている。
地方税を国税化して再配分する手法は、応益負担という地方税の根本原則を歪めるものである。本来、地方財源の不足や地域間の税収等の格差については、国の責任において、必要な財源を保障することが重要である。
特別区は、首都直下地震への備えや高齢者対策、子育て支援策、公共施設の老朽化対策など、膨大な行政需要を抱えている。また、世界情勢や円安による原油価格・物価高騰等の影響も重なり、膨大な財政需要が生じている。
地方自治体が責任を持って充実した住民サービスを提供していくためには、需要に見合う財源の確保が不可欠であり、限られた地方税財源の中での配分調整では根本的な解決を図ることはできない。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 地域間の税収格差の是正は、法人住民税の一部国税化ではなく、国の責任において、自ら行うこと。
- 2 地方消費税の清算基準は、「税収を最終消費地に帰属させる」という清算基準の本来の趣旨に沿った基準を用いること。
4 航空機の安全確保を求める要望
提出先:国土交通大臣
令和2年3月29日より新飛行経路が運用開始され、騒音等による区民の生活環境への影響が、より広範に及ぶことが懸念されていた。
こうした中、令和6年1月2日に東京国際空港(羽田空港)において航空機衝突事故が発生し、同年12月には運輸安全委員会より経過報告がなされ、引き続き原因究明が行われているところである。
本件は航空の安全確保に対する信頼を揺るがしかねない重大な事故であったことから、同様事案の再発防止の徹底、地域住民および空港利用者の不安払しょくを図るため、以下の事項について要望する。
- 1 空港交通業務の安全にかかる手順について点検を行い、原因究明に努めること。
- 2 羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の中間取りまとめにおいて示された対策の実施を徹底すること。
- 3 運輸安全委員会の調査結果に従い改善を講じ、航空安全対策の取組みをより一層強化すること。
- 4 関係自治体および地域住民に対し、丁寧な情報提供を実施すること。
5 災害発生時における行政施設や避難所等での通信体制の強化を求める要望特別支援学校・学級等への教員等の適切な配置を求める要望
提出先:内閣府特命担当大臣
(防災)
能登半島地震では、地中に埋設された光ケーブルなどの通信回線が、地盤の亀裂・陥没や土砂崩れによって断線し、電線も同様に断線するなどしたため、多くの基地局が機能を停止し、救助活動や復旧作業に甚大な影響を及ぼしたが、そのような状況下において、米国の民間企業が提供する通信衛星を用いたインターネットサービスが、被災地の通信復旧に多大な貢献を果たした。
昨年11月に中央防災会議がまとめた「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について」の報告書では、「発災当初に通信途絶が発生し、通話やデータ送付などが困難となり意思疎通の手段が制約された一方、衛星インターネットの活用により通信環境の改善が図られた」と指摘されている。そして、実施すべき取組みとして、「衛星通信設備や公共安全モバイルシステムなどの導入・活用、及び速やかに使用できるよう平時からの訓練などを検討すべきである」と提言している。
首都直下地震の発生が懸念される現状を踏まえ、行政機関及び個々の被災者においても情報収集や通信環境を維持するための体制強化に向けて、以下の取り組みを求める。
- 1 今後の大規模災害発生時における行政施設や避難所等の通信確保のため、各所への衛星インターネット機器等の新技術に関する情報提供と、全国的なインフラ整備に注力すること。
- 2 技術の進展に応じた新しい通信サービス・機器について、その迅速な立ち上げと継続的な運営を地域が自ら円滑に行えるよう、新しい通信技術の導入やそれに付随する人的訓練に係る経費について、財政面を含む地方自治体への支援を強化すること。
6 国民健康保険事業の抜本的見直しを求める要望
提出先:厚生労働大臣
国民健康保険制度は、低所得者層の増加と被用者保険の適用拡大などの法改正によって被保険者の減少が懸念され、さらには、医療費の増加といった構造的な課題が明確になっている。これでは持続可能かつ相互扶助としての事業展開がますます難しくなり、被保険者への負担は増すばかりである。
特別区長会としての対応は、令和5年7月31日に、当時の厚生労働大臣に対して、保険者へのさらなる財政支援と被保険者の保険料負担軽減の拡充、そして子育て世帯への支援として、子どもに係る均等割保険料の軽減措置の対象拡大や軽減割合の拡大による軽減措置の強化を要望している。
併せて、令和5年度8月8日には東京都に対して、保険料負担軽減策のさらなる実施及び財政支援の拡充を要望している。11月16日には厚生労働大臣に対して、国民健康保険制度の見直しに関する提言を行った。さらに議長会として、令和6年8月2日にも厚生労働大臣に同様の要望を提出した。
しかしながら、今後も「子ども・子育て支援金制度」が開始となるなど、保険料の値上げは、回避できないと想像され、各区の財政負担も増すばかりである。
よって、国民健康保険事業の抜本的見直しを強く要望するものである。
7 鉄道の連続立体交差事業の一層の推進を求める要望
提出先:国土交通大臣
特別区内においては、まだ数多くの踏切が存在し、事故の危険性や交通渋滞の発生によって道路交通円滑化の大きな妨げとなっている。また、鉄道により分断された地域では、経済活動や日常生活への影響など、深刻な課題を長年抱え、一体的なまちづくりが進まない状況にもなっている。
こうした状況を改善する最も効果的な事業が、鉄道の連続立体交差事業である。
区では鉄道の連続立体交差事業について、これまで関係機関との継続的な検討を進めるとともに、地元住民組織等と鉄道立体化に併せた総合的な駅周辺のまちづくりについての検討を重ねてきたところである。しかしながら、鉄道の連続立体交差事業は都市計画事業であり、計画から完了まで莫大な事業費と長い期間を要することから、区施行による事業を着実に完了させるには、財政面における手厚い支援が必要となる。
これらの趣旨を踏まえ、下記の事項について要望する。
- 1 区施行での事業化に対し、地域の実情に応じた財政的支援を拡充すること。
- 2 事業を安定的に推進することができるよう、毎年度予算を確保すること。
8 聞こえの支援を必要とする人への積極的な支援を求める要望
提出先:厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣
(共生・共助)
現在、急速な高齢化に比例し、難聴者も急増している。難聴は認知症の危険因子の一つと言われており、人や社会とのコミュニケーションを避けるようになることから、社会的孤立に陥る可能性も懸念されている。聞こえを補う医療機器である補聴器は、「気導補聴器」と「骨導補聴器」が一般的に使用されてきたが、「軟骨伝導」等の新しい技術を用いた補聴器が開発され、従来の補聴器では十分な補聴効果が得られない人や、装用そのものが難しい人に対しての新たな選択肢となった。
しかし、聞こえの支援を必要とする人に、自身の状態に合う補聴器の情報や各自治体による購入補助制度が十分に伝わっていないことが多く、社会参画を妨げる一因となっている。今後の更なる高齢化を見据えた認知症の予防と共に、高齢者の積極的な社会参画を実現するために、補聴器だけではなくヒアリングループや音声認識ソフト等も含めた聴覚補助機器の積極的な活用を促進する必要がある。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 難聴に悩む人が、医師や専門家の助言のもとで、自分に合った補聴器を選択することができる環境を整えること。
- 2 行政機関の窓口等へ聴覚補助機器を配備するよう推進すること。
- 3 地域の社会福祉協議会や福祉施設との連携のもと、聞こえの支援を必要とする人への情報提供の機会創出等、聴覚補助機器を普及させるための環境を整えること。
- 4 地方自治体が取り組む聞こえの支援に対して、財政的な支援等を講ずること。
9 ひきこもりの実態把握・支援等を継続的に行うための負担軽減を求める要望
提出先:内閣府特命担当大臣
(共生・共助)
ひきこもり状態の方は、自らSOSをあげることが少なく、周囲へ相談することをためらうことがあるため、どのくらいの方がどのような支援を求めているのかを調査し、ひきこもり状態を早期に発見して支援施策につなげていくことが、長期化を防ぐためには重要である。
また、ひきこもり状態に至るまでの状況は人それぞれであり、時間をかけて支援していく必要があるため、伴走型のつながりを続ける支援が求められる。さらに、ひきこもり状態の方が安心して過ごすことのできる常設の居場所や、ひきこもり状態の方が社会に出て働きたいという希望を持つため就労体験の場を設置することが必要である。このような施策の実施にあたり、現状では国の根拠法令や制度に基づいた十分な補助がないため、自治体の限られた財源の中では、安定した持続的運営をすることが困難な状況である。ひきこもりの状態の方が早期に回復することで、生産力の向上にもつながり、支えられる側から支える側となり、公的負担の軽減にも寄与することが期待されるため、国としてもひきこもり支援事業に力を入れることが必須であると考える。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 ひきこもりの状態の方やその家族等が抱える個々のニーズに応え、適切な支援につなげるため、定期的なアンケート調査の実施に係る予算措置を恒久的に講ずること、又は国による制度を設立すること。
- 2 ひきこもりの状態の方の支援施策として、居場所事業や就労体験場所を継続的に実施するための人件費及び施設にかかる費用について、予算措置を恒久的に講ずること。