特別区議会議長会
概要 規約 名簿 要望活動・決議 リンク集 アクセス
HOME > 要望活動・決議 > 特別区議会議長会、国に対し要望活動を実施

要望活動・決議

○特別区議会議長会、国に対し要望活動を実施

 令和7年度の国の施策及び予算に関し、8月2日に特別区議会議長会おのせ康裕会長(目黒区議会議長)鈴木たかや副会長(港区議会議長)大沢たかし会計監事(北区議会議長)が厚生労働省、国土交通省を訪問し、要望活動を行いました。また、8月6日に文部科学省、9日に総務省、財務省を会長、副会長が訪問し、要望活動を行いました。
 要望内容は、各区議会議長から提出された項目を基に、7月の議長会総会で決定されたものです。

●厚生労働大臣への要望
 武見敬三厚生労働大臣と面談し、ひきこもり相談・支援等の充実、若者の市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)防止対策の強化等の3項目を要望しました。
 武見大臣からは「ひきこもり対策については、ひきこもり地域支援センターの23区での相談業務のあり方やオンラインの状況等、いろいろな課題を明らかにして、それを教えていただければこちらでも対応できるようにしたい。オーバードーズについては、薬局の提供者側だけではなく、特に学校教育の中で、先生が指導してくれると一番良い。薬局は厚労省担当だが、むしろ区議会から直接教育委員会に言っていただいて、両方からオーバードーズを抑えるかたちでやらせていただけるとありがたい。」等の発言がありました。

写真

武見厚生労働大臣に要望書を手渡すおのせ会長(中央左)、鈴木副会長(左)、大沢会計監事(右)

 

●国土交通大臣への要望
 堂故茂副大臣と面談し、鉄道の連続立体交差事業の一層の推進等の5項目を要望しました。
 堂故副大臣からは「一番大事なのは予算を確保することだが、地域の皆さんのご協力が整っているということも非常に大事な要素である。予算の獲得についてはできるだけ頑張らせていただきたい。日本社会を進化させるためには交通安全を含めて、大事な訴え、事業だと思う。こちらも頑張るので、ぜひご支援いただきたい。」等の発言がありました。

写真

堂故国土交通副大臣に要望書を手渡すおのせ会長(中央左)、鈴木副会長(左)、大沢会計監事(右)

 

●文部科学大臣への要望
 盛山正仁文部科学大臣と面談し、学校給食費の無償化、教員不足解消と教員の質の向上に向けた取組の更なる強化等の教育環境の更なる充実のための財政支援及び不登校の公的対応強化を求める要望等の3項目を要望しました。
 盛山大臣からは「給食については、学校給食に関する実態調査の結果を発表した。年末を目途に論点を整理しようとしているので、それが終わるまでお待ちいただきたい。教員については、処遇の改善を含めた働き方改革に取り組もうというところである。これが進めば、先生に対しての悪いイメージが薄れてきて、学生さんも教職を取って教員になろうと考えてくれるのではないかと思っている。不登校については、不登校にならないようにするにはどうしていくのか、これをまず考える必要があると思う。そして、残念ながら不登校になってしまったお子さんに対しての家庭学習、フリースクールに国としてどこまでできるのか考えていきたいと思う。少しでも早く学校に戻ることができるように、そして健全に立ち直っていくことができるように我々も未来を支える貴重な人材をしっかり支えていきたいと考えている。」等の発言がありました。

写真

盛山文部科学大臣に要望書を手渡すおのせ会長(右)、鈴木副会長(左)

 

●総務大臣への要望
 原邦彰大臣官房総務審議官と面談し、ふるさと納税制度に関する要望等の2項目を要望しました。
 原審議官からは「(ふるさと納税制度は)本来であれば返礼品なしで、自分を大きく育ててもらった地方のおかげ(恩返し)という趣旨は悪くないと思う。また、例えばクラウドファンディングとか、能登半島は返礼品なしで(寄付件数が)4倍膨らんでいて、今回、宮崎の災害で苦労したところに少しでも助けになろうという、こういう発想は悪くないと思う。一方、税制とは違う、地場産業の振興的なところもあったと思う。ただ、金額が大きくなり、今年は1兆円ということで、ある意味節目のときではある。過去にも法律改正して地場産品は3割、手数料も含めて5割ということで基準を決めてきて、それでも多すぎるという議論がある。本来の趣旨ということを常に忘れないで、いろいろな見直しをしながらやりたいと思う。皆さんから見ると小さな一歩かもしれないけれど、今年のポイント廃止というのはある意味、我々からすれば適正化に向けての第一歩だと思っている。」等の発言がありました。

写真

原邦彰審議官に要望書を手渡すおのせ会長(右)、鈴木副会長(左)

 

●財務大臣への要望
 瀬戸隆一財務大臣政務官と面談し、地方税財源の充実強化等の2項目を要望しました。
 瀬戸政務官からは「それぞれの地方自治体のいろいろな課題に取り組めるように、国としても考えていかなければならない部分もある。財務省としても総務省としっかりやり取りをしていきたいとに思うので、皆さんも総務省とお話をしていただけたらと思う。首都圏の皆さんにも助けてもらわないといけないし、皆さんも皆さんでまたやらなきゃいけないでしょうし、しっかり受け止めていきたい。」等の発言がありました。

写真

瀬戸隆一大臣政務官に要望書を手渡すおのせ会長(左)、鈴木副会長(右)

 

そのほか、以下のとおり要望書を郵送し提出しました。

  1. 1.農林水産大臣あて
    • 法定受託事務として地方自治体が実施している調査の見直しに関する要望
  2. 2.経済産業大臣あて
    • 法定受託事務として地方自治体が実施している調査の見直しに関する要望
  3. 3.内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策)あて
    • 教育環境の更なる充実のための財政支援を求める要望等の2項目
  4. 4.内閣府特命担当大臣(孤独・孤立対策)あて
    • ひきこもり相談・支援等の充実を求める要望等の2項目

1 ふるさと納税制度に関する要望

提出先:総務大臣

 令和6年度のふるさと納税による特別区民税の減収額が、特別区合計で約900億円を超える見込みである。ここ10年間で約100倍に膨らむ規模であり、看過できない状況となっている。
 その結果、全住民が減収による行政サービス低下の影響を受けざるを得ない一方、制度を利用する一部の住民のみが恩恵を受け、特に高所得者ほど多額の返礼品を受け取るといった不公平が生じている。また、一部の限られた自治体に寄附が集中する一方で、多くの自治体で返礼品の経費負担や減収に苦しんでいること、地方交付税の交付団体では、ふるさと納税により住民税が減収した場合は地方交付税により補填されるため、結果的に地方交付税の財源を圧迫する要因にもなっていることなど、制度の歪みが顕在化している。
 住民税は、地方自治体が行政サービスを提供するために必要な経費を賄うものであり、その地域の住民が負担し合うものである。現在のふるさと納税制度は、受益と負担という税制本来の趣旨を逸脱し、地方自治の根幹を破壊するものである。
 東京は、一貫して、我が国の政治・経済・文化の中枢として、日本を牽引してきた。人口3,000万人の東京圏は、世界に冠たる巨大で豊かな大都市であり、いわば日本のエンジンであり、その中心となってきたのが特別区である。東京の活力が低下することは日本全体の低迷につながることを意味している。本制度は、こうした東京の役割を考慮せず、地方の財源不足を補うために税収の移転を図るものである。
 これらの趣旨を踏まえ、以下の事項について要望する。

  1. 1 ふるさと納税制度本来の趣旨に沿った見直しを早急に行うこと。
  2. 2 利用する住民のみが恩恵を受けるといった不公平を是正すること。

▲ページのトップへ

2 教育環境の更なる充実のための財政支援を求める要望

提出先:財務大臣
文部科学大臣
内閣府特命担当大臣
(こども政策 少子化対策)

 日本の将来を担う子どもたちがより良い環境で十分な教育を受けられるよう、下記の事項について財政措置を講じるよう要望する。

1 学校給食費の無償化について
 子どもの心身の健全な発達に直結する学校給食は、様々な環境の変化が生じても、確実に維持されなければならない重要な施策である。少子化対策につながる子育て世帯の負担軽減策として学校給食の無償化に取り組む自治体が増えているが、共通する課題は、地域格差の是正と制度の永続性を担保するための財源確保である。学校給食の意義を考えれば、自治体の判断や財政状況によって差が生じたり、事業の継続性が損なわれることは望ましくない。
 学校給食費無償化は国の責任において実施すべきものであり、自治体への財政措置を講じるよう下記の事項について要望する。

  1. (1)国の責任において財政措置を講じて学校給食の無償化を進めること。
  2. (2)学校給食費軽減策を実施する各自治体に対して、無償化へ向けた国による恒久的な財政支援が行われるまでの間、地方創生臨時交付金の継続や新たな交付金等の創設等により、その支援の拡充を図ること。

2 教員不足解消と教員の質の向上に向けた取組の更なる強化について
 令和3年度に文部科学省が実施した調査により、公立学校に配置する教員数は令和3年始業日時点で2,558人の不足が生じている実態が明らかとなった。東京都では、前年度の同時期よりも欠員は改善したが、公立小学校においては、今年度当初の4月時点で約20人の教員欠員が生じている。依然、全国の学校現場での教員不足は喫緊の課題となっている。また、東京都では令和6年度の教員採用選考において、小学校の受験倍率が1.1倍、小中高・特別支援学校を合わせた全体の倍率も1.6倍で初めて2倍を切った。
 現在、国では教員不足を解消するために教職調整額の増額や残業時間の上限を減らす等の処遇改善などの取組を行っているが、更なる教員不足解消と教員の質の向上に向けて、下記の事項について要望する。

  1. (1)学校管理職による学校マネジメント機能強化に向けて支援体制を充実させること。
  2. (2)給与・勤務制度・働き方改革等、教職の魅力向上においての処遇改善を講じ、教員が子ども達と向き合える時間の確保、環境整備を強化するための財政措置を講じること。
  3. (3)メンタル対策を含めた教員の健康確保の取組に財政措置を講じること。
  4. (4)新規採用教員の離職防止に向けた人的支援及び研修等の充実のための財政措置を講じること。
  5. (5)教員免許を所持する潜在教員の募集・採用に係る支援を充実すること。

3 小学校全学年35人学級について
 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の一部改正が令和3年4月1日に施行された。
 学級数の増加に伴い教室の不足が想定される学校について、計画的な施設整備を進めている区もあり、普通教室確保に向けた大規模な改修設計・工事は、急激な円安による建築資材の高騰、公共工事設計労務単価の引き上げ等により区の財政に大きな影響を与えている。
 今後、施設整備を計画的に進め、すべての児童への教育水準を維持向上させるため、国においては、改修工事や増築棟の建設に係る更なる財政措置の支援とともに、民有地の活用などに係る新たな財政措置等の支援を要望する。

▲ページのトップへ

3 ひきこもり相談・支援等の充実を求める要望

提出先:厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣
(孤独・孤立対策)

 ひきこもり当事者やその家族の悩みに対する解決策は十人十色であるため、個別支援を適切に実施するには、安定した人材の確保が必要である。
 また、ひきこもり当事者やその家族との繋がりを維持するためには、電話や対面による相談に加えて、会議ツールやSNS、メタバースなどオンラインによる相談支援や社会参加の選択肢を充実させることが重要であると共に、相談記録のデジタル化や、蓄積された相談支援の実績を分析して今後の支援策に活用するため、AI等を活用した管理システムや情報共有を円滑に行える組織体制等を構築していくことが効果的である。
 さらに、ひきこもり当事者が安心して過ごすことのできる常設の居場所が必要であるが、その立ち上げ支援策を目的とした補助制度がない。現在、ひきこもり支援推進事業国庫補助として、居場所の運営費等が対象となっているが、これらの需要に対しては十分といえず、限られた地方税財源の中では十分な運営をすることが困難である。
 よって、以下の事項について要望する。

  1. 1 ひきこもり状態にある方の相談支援のための人材確保、オンラインによる相談支援や社会参加のツール、相談支援の管理システム構築の充実を図るため、ひきこもり支援推進事業費補助を拡充すること。
  2. 2 居場所の立ち上げに必要な施設整備や改修に係る経費補助制度を設けること。

▲ページのトップへ

4 鉄道の連続立体交差事業の一層の推進を求める要望

提出先:国土交通大臣

 特別区内においては、まだ数多くの踏切が存在し、事故の危険性や交通渋滞の発生によって道路交通円滑化の大きな妨げとなっている。また、鉄道により分断された地域では、経済活動や日常生活への影響など、深刻な課題を長年抱え、一体的なまちづくりが進まない状況にもなっている。
 こうした状況を改善する最も効果的な事業が、鉄道の連続立体交差事業である。
 区では鉄道の連続立体交差事業について、これまで関係機関との継続的な検討を進めるとともに、地元住民組織等と鉄道立体化に併せた総合的な駅周辺のまちづくりについての検討を重ねてきたところである。しかしながら、鉄道の連続立体交差事業は都市計画事業であり、計画から完了まで莫大な事業費と長い期間を要することから、区施行による事業を着実に完了させるには、財政面における手厚い支援が必要となる。
 これらの趣旨を踏まえ、下記の事項について要望する。

  1. 1 区施行での事業化に対し、地域の実情に応じた財政的支援を拡充すること。
  2. 2 事業を安定的に推進することができるよう、毎年度予算を確保すること。

▲ページのトップへ

5 特別支援学校・学級等への教員等の適切な配置を求める要望

提出先:文部科学大臣

 文部科学省発行の「学校基本調査」によると、特別支援教育を受ける児童・生徒は年々増加しており、また、通級による指導を受けている児童・生徒数は10年間で約2.6倍となっている。
 このような状況に適切に対処するためには、特別支援学校・学級等への専門的な知識や経験を持った教員等の増員が必要不可欠である。
 また、共生社会の形成に向けて、子どもたちの多様性を尊重するインクルーシブ教育システムの構築が求められており、我が国の特別支援教育のさらなる拡充が必要である。よって、以下の事項について要望する。

  1. 1 障がいのある児童・生徒に対し、学校における日常生活の介助や学習活動上のサポート等を行う特別支援教育支援員の適切な配置に向け支援すること。
  2. 2 保護者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担い、子どもたちのニーズに合わせた支援をサポートする特別支援教育コーディネーターの適切な配置に向け支援すること。
  3. 3 医療的ケアが必要な子どもや、障がいのある子どもへの支援を的確に実施するために、看護師や言語聴覚士、作業療法士、理学療法士等の専門家の適切な配置に向け支援すること。
  4. 4 各学校でインクルーシブ教育を一体的に進めるために、特別支援学校をセンター的機能として強化し、各学校の担当教員だけでなく学校長等に対する指導や研修等を実施し、校内全体での取り組みを促進すること。
  5. 5 GIGAスクール構想により全児童・生徒に配付した端末を、特別支援学校・学級において個々の特性や教育的ニーズに応じた支援ツールとして有効に活用するための「(仮称)特別支援教育デジタル支援員」配置に向け支援すること。
  6. 6 教職員への特別支援学校教諭免許状取得支援の強化や、大学等における特別支援教育に関する科目の修得促進等の支援を行い、特別免許状の取得についても強力に推進すること。

▲ページのトップへ

6 観光バス駐車場の整備に関する要望

提出先:国土交通大臣

 国は、成長戦略の一翼として「観光立国」を目指した取り組みを推進している。
 その結果、訪日外国人旅行者数は順調な伸びを示し、昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことにより人の流れは活発化し、個人消費とインバウンド需要が回復した。これにあわせ、観光客の移動手段の一つである観光バスの輸送人員も増加傾向にある。
 しかしながら、都内の観光地等周辺では、観光バスの乗降場所や駐車場が絶対的に不足していることから、路上駐車による交通渋滞や周辺住民とのトラブル、観光客の路上乗降における交通安全上の問題、アイドリングによる環境悪化や騒音等が生じており、一自治体で解決することは困難な状況となっている。
 地域住民の安全安心な環境を守るとともに、増加する観光ニーズに応えつつ都内の円滑な交通確保を図り、観光客にとってより利便性の高い環境を整備するため、以下の事項について要望する。

  1. 1 観光バスの駐車場対策のため、国有地の優先的な活用の推進を実施すること。
  2. 2 観光バス駐車場の整備における財政的支援の更なる拡充を図ること。

▲ページのトップへ

7 地方税財源の充実強化を求める要望

提出先:財務大臣

 「地方創生の推進」と「税源偏在是正」の名のもと、法人住民税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税等の不合理な税制改正が行われ、特別区の貴重な税源は一方的に奪われている。
 地方税を国税化して再配分する手法は、応益負担という地方税の根本原則を歪めるものである。本来、地方財源の不足や地域間の税収等の格差については、国の責任において、必要な財源を保障することが重要である。
 特別区は、首都直下地震への備えや高齢者対策、子育て支援策、公共施設の老朽化対策など、膨大な行政需要を抱えている。また、ウクライナ情勢や円安による原油価格・物価高騰等の影響も重なり、膨大な財政需要が生じている。
 地方自治体が責任を持って充実した住民サービスを提供していくためには、需要に見合う財源の確保が不可欠であり、限られた地方税財源の中での配分調整では根本的な解決を図ることはできない。
 よって、以下の事項について要望する。

  1. 1 地域間の税収格差の是正は、法人住民税の一部国税化ではなく、国の責任において、自ら行うこと。
  2. 2 地方消費税の清算基準は、「税収を最終消費地に帰属させる」という清算基準の本来の趣旨に沿った基準を用いること。

▲ページのトップへ

8 法定受託事務として地方自治体が実施している調査の見直しに関する要望

提出先:総務大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
国土交通大臣

 国勢調査をはじめ、住宅・土地統計調査、経済センサスなど、法定受託事務として地方自治体が実施している調査は、調査員が調査対象世帯等を直接訪問するという対面式の調査方法を基本としてきた。
 このような対面式の調査方法については、プライバシー意識や防犯意識の高まり、オートロックマンションの増加、ライフスタイルの多様化による在宅時間の変化などから、年々、調査への協力が得られにくくなってきており、調査票の配布や回収が困難な状況になっている。
 調査内容や調査方法についても、詳細な調査項目や記名調査は、調査を回答する側と、調査を依頼する側双方にとって、非常に負担が大きなものとなっている。また、調査員を依頼している町会関係者の高齢化等により、調査方法や調査地域に精通した調査員の確保が困難になっている。
 これらの調査を時代の変化に合わせて、デジタルを活用し、円滑に実施していくために、デジタル人材の育成支援やデジタル推進の足かせとなる法律の見直しにおいて、国が大きな役割を果たす必要がある。特に高齢者やデジタルリテラシーが低い層に対する支援策を講じることが重要である。さらに、非接触型ポスティングによる実施や、それが効果的に機能するための適切な配布方法と受領確認の仕組みを確立していかねばならない。こうした課題を検討しながら実行性のある調査方法を考えていく必要がある。
 よって、法定受託事務として地方自治体が実施している調査のあり方、調査方法について、個人情報の保護を担保しながらデジタル化や非接触型のポスティングを導入するなどの見直しを図るよう強く要望する。

▲ページのトップへ

9 災害時の生活環境向上に関する要望

提出先:国土交通大臣

 令和6年能登半島地震では、甚大な被害を受け、断水によって飲料水や生活用水が使用できなくなり、トイレ問題は深刻化した。避難所生活が長期化する場合、簡易トイレは、感染症などの衛生上の問題の発生や既往症の悪化による災害関連死の原因ともなると指摘されている。
 令和6年6月現在、能登半島では、「一般社団法人 助けあいジャパン」に加盟する全国の自治体から派遣された20台以上の移動式水洗トイレ「トイレトレーラー」が活躍している。
 避難所の衛生環境の確保は、避難者の健康と安全を守るために欠かせない。トイレトレーラーや災害コンテナの導入は、災害時の生活環境を大幅に向上させる効果が期待される。
 発災時に被災地へ集結する助け合いこそが必要であり、全国1,700余の自治体における避難所の衛生環境対策の強化促進を求め、以下の事項について要望する。

  1. 1 トイレトレーラーの配備促進を図ること。
  2. 2 災害コンテナの設置および適切な配置のためのガイドラインを策定すること。
  3. 3 トイレトレーラー・災害コンテナの導入経費、維持管理費の負担軽減のため、特別区に対して簡素な手続きで行える財政措置を講じること。

▲ページのトップへ

10 不登校の公的対応強化を求める要望

提出先:文部科学大臣
内閣府特命担当大臣
(こども政策 少子化対策)

 令和4年度の不登校児童生徒数は前年度から5万4,108人の激増で29万9,048人となり、10年連続の増加傾向で過去最高を更新した。さらに、不登校も含めて年間30日以上欠席した児童生徒数は46万648人にのぼっている。不登校問題は、対象となる児童生徒の抱える課題や家庭環境が違い多岐にわたるため、個々の状況に応じた支援が重要になるが、学級担任の負担が増すことで寄り添った支援が難しくなっており、支援体制の再構築が求められている。
 国は令和5年10月に「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を策定し、誰一人取り残されない学びの保障に取り組んでいるが、不登校児童生徒が安心して過ごせる場所の確保や学校以外の場所で学習するための対応は不充分であり、自治体間での差も生じていることから、以下の事項について要望する。

  1. 1 家庭学習やフリースクール等の様々な学習機会に対し、環境整備や人材確保のための支援を講じること。
  2. 2 不登校の公的相談窓口を支援拡充すること。

▲ページのトップへ

11 航空機の安全確保を求める要望

提出先:国土交通大臣

 令和2年3月29日より東京国際空港(羽田空港)の新飛行経路が運用開始され、騒音等による区民の生活環境への影響が、より広範に及ぶことが懸念されていた。
 こうした中、本年1月2日に東京国際空港(羽田空港)において、日本航空株式会社の旅客機と海上保安庁の固定翼機が衝突し、海上保安庁の乗員6名が死傷、日本航空機の乗員・乗客379名については複数名が負傷するに至った。
 また、滑走路の閉鎖等により、多くの空港利用者に影響を及ぼしたことに加え、通常と異なる滑走路運用を行う可能性が生じる事態となった。
 本件の詳細については現在調査中であるが、航空の安全確保に対する信頼を揺るがしかねない重大な事故である。
 同様事案の再発防止の徹底、地域住民および空港利用者の不安払しょくを図るため、以下の事項について要望する。

  1. 1 空港交通業務の安全にかかる手順について点検を行い、原因究明に努めること。
  2. 2 運輸安全委員会の調査結果に従い改善を講じ、航空安全対策の取組をより一層強化すること。
  3. 3 関係自治体および地域住民に対し、丁寧な情報提供を実施すること。

▲ページのトップへ

12 若者の市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)防止対策の強化を求める要望

提出先:厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣
(孤独・孤立対策)

 近年、処方箋がなくても薬局やドラッグストアで購入できる市販薬の濫用・依存や急性中毒が、重大な社会問題となりつつある。実際、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)による救急搬送が、2018年から2020年にかけて2倍に増加したという報告や、精神科医療施設を受診する患者において、市販薬を主たる薬物とする薬物依存患者が、2012年から2020年にかけて約6倍に増加したといった報告がある。
 国立精神・神経医療研究センターの2020年調査によると、全国の精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた10代の患者の主な薬物において、市販薬が全体の56.4%を占めているとのことである。また、過去1年以内に市販薬の濫用経験がある高校生の割合は「60人に1人」と深刻な状況にあることも明らかになった。
 不安や葛藤、憂鬱な気分を和らげたいなど、現実逃避や精神的苦痛の緩和のために、若者がオーバードーズに陥るケースが多く、実際、市販薬を過剰に摂取することで、疲労感や不快感が一時的に解消される場合があり、同じ効果を期待してより過剰な摂取を繰り返すことで、肝機能障害、重篤な意識障害や呼吸不全などを引き起こしたり、心肺停止で死亡する事例も発生している。
 市販薬は違法薬物とは違い、所持することで罪にはならないことから、濫用が発見されにくいという現実があると同時に、オーバードーズによる健康被害は、違法薬物よりも深刻になる場合もある。よって国において、このような薬物依存による健康被害から一人でも多くの若者を守るために、以下の事項について特段の取り組みを求める。

  1. 1 現在、濫用等の恐れがある医薬品の6成分を含む市販薬を販売する際、購入者が子ども(高校生・中学生等)である場合は、その氏名や年齢、使用状況等を確認することになっているが、その際、副作用などの説明を必須とすること。
  2. 2 若者への市販薬の販売において、その含有成分に応じて販売する容量を適切に制限すると同時に、対面かオンライン通話での販売を義務づけ、副作用などの説明と合わせて、必要に応じて適切な相談窓口等を紹介できる体制を整えること。
  3. 3 濫用のおそれがある薬の指定を的確に進めると同時に、身分証による本人確認のほか、繰り返しの購入による過剰摂取を防止するために、販売記録等が確認できる環境の整備を検討すること。
  4. 4 若者のオーバードーズには、社会的孤立や生きづらさが背景にあるため、オーバードーズを孤独・孤立の問題として位置づけ、若者の居場所づくり等の施策を推進すること。

▲ページのトップへ

13 国民健康保険事業の抜本的見直しを求める要望

提出先:厚生労働大臣

 国民健康保険制度は、低所得者層の増加と法改正によって被保険者の減少、医療費の増加といった構造的な課題が明確になっている。これでは持続可能な事業展開がますます難しくなり、被保険者への負担は増すばかりである。
 特別区としての対応は、令和5年7月31日特別区長会から当時の厚生労働大臣に対して、保険者へのさらなる財政支援と被保険者の保険料負担軽減の拡充、そして子育て世帯への支援として、子どもに係る均等割保険料の軽減措置の対象拡大や軽減割合の拡大による軽減措置の強化を要望している。
 併せて、8月8日には東京都に対して、保険料負担軽減策のさらなる実施及び財政支援の拡充を要望している。追加して11月16日には現在の厚生労働大臣に対して、国民健康保険制度の見直しに関する提言を行った。
 しかしながら、次年度も保険料の値上げは、回避できないと想像され、各区の財政負担も増すばかりである。
 よって、国民健康保険事業の抜本的見直しを強く要望するものである。

▲ページのトップへ

Copyright (C)2007 特別区議会議長会 All Rights Reserved
特別区議会議長会