○令和6年度東京都の施策及び予算に関する要望活動を実施
8月21日、山本香代子会長(江東区議会議長)をはじめ、役員議長8名が都庁を訪問し、要望活動を行いました。
●東京都知事への要望
黒沼靖東京都副知事と面談し、山本会長から東京都知事あての要望書を手渡しました。
はじめに、山本会長から6項目の要望事項について趣旨説明を行いました。少子化対策及び子ども・若者支援の要望では、給食費無償化に対する地域間格差の是正や高校生相当世代までの医療費完全無償化のための財政支援を求め、児童相談所設置に向けた財源措置では、現在の児童相談所運営に係る都区財政調整の配分割合に関する都区間の見解の隔たりを述べたうえで基準財政需要額への実態に見合った算定と配分割合の引き上げ等を求めました。そのほか「いずれの要望事項も特別区にとって、緊急かつ重要な課題であるので、その実現に向け、ご努力いただくようお願いしたい。」と要望しました。
黒沼副知事からは、「児童相談所に関する都区財政調整協議については、現在、都区の見解が乖離しているが、この乖離を埋めるために、特別区長会と共同で新たな会議体を設置し、配分割合の前段となる議論から進めることとなった。都区で真摯に取り組み、一歩一歩、議論を前に進めていく。
また、全国知事会議において、都知事から、国による地方税の「偏在是正措置」について、「地方交付税を加えた人口一人当たりの一般財源は、都は全国平均以下の水準であり、むしろ逆偏在の状況である」と強く主張するなど、エビデンスを示しながら反論した。これまでの不合理な偏在是正措置は、法人事業税のみならず、法人住民税にも影響を及ぼしており、都区双方にとって深刻な課題である。都では過去16年間の累計で、その額は約7・9兆円にも達しており、特別区も昨年度までの累計で約1・1兆円もの影響を受けているのはご案内のとおりである。都区で同じ危機感を持って、東京全体の財源を守っていく必要がある。
本日、いただいたご要望については、「「未来の東京」戦略」の推進や来年度予算に向けて、真摯に対応を検討していく。
東京には、脱炭素、DX・GX、防災・強靭化、国際競争力など、加速度的な取組が必要な課題が山積している。都と特別区が連携・協力して、今日的な課題に向き合い、スピーディに対応していくことが肝要であると考える。今後とも、都政への特別区議会の皆様の御理解と御協力をいただきたい。」等の発言がありました。

黒沼東京都副知事(左から5人目)に要望書を手渡す山本会長(左から4人目)、丸山副会長(右から4人目)、池田会計監事(左から3人目)、瓜生幹事(右から3人目)、押見幹事(左から2人目)、田中幹事(右から2人目)、福田幹事(左から1人目)、秋谷参与(右から1人目)

要望活動の様子
1 少子化対策及び子ども・若者支援に関する要望
昨年の全国の出生数は80万人を割り込み、想定よりも早いペースで少子化が進んでいる。一方、児童虐待や不登校、いじめ、自殺は、過去最悪の状況となるなど子どもを取り巻く環境は、深刻さを増している。また、世界情勢等による食料価格の高騰が家計に深刻な影を落とし、子育て家庭においては、学校給食への影響に対する不安が高まっている。
これまで学校における給食は、学校給食法第1条に定める「学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的」として、各々の児童・生徒の体力向上と給食を通じた食の重要性について、学校教育の一環として行われてきており、その意義は大変大きいものである。給食の無償化は、子育て家庭の経済的負担軽減、給食費の集金等の教員の業務負担軽減、物価高騰の折、給食の質の確保等のねらいがあり、大変重要であるが、その対応状況は区によって異なり、特別区間で地域間格差が生じている。
また、中学生までの子ども医療費は、所得制限を導入している都の制度に上乗せをして、特別区では完全無償化している。令和5年度には、都は、高校生相当世代分の子ども医療費についても、所得制限の考え方を導入し、所得制限部分にかかる金額を、3年間補助金として交付することとしているが、その先は不透明である。この先、区の負担により高校生相当世代の完全無償化を実施するならば、区単費で多額の予算が必要となり、区の財政への影響は大きい。
これらを踏まえ、以下の事項を要望する。
- 1 給食を提供している小学校・中学校・義務教育学校・特別支援学校・保育所・幼稚園・認定こども園・認可外保育施設における給食費を無償化するために必要な経費の財政支援を行うこと。
- 2 高校生相当世代までの医療費完全無償化に要する経費の全額を東京都の負担とすること。
- 3 保育の質及び保育士の安定的確保のため、保育士の更なる処遇改善に向け公定価格の引上げを国に求めること。
2 児童相談所設置に向けた財源措置を求める要望
平成28年の児童福祉法改正により、特別区も政令による指定を受けて児童相談所を設置できることとなった。これを受け、特別区は児童相談所設置に向けた準備を進めており、令和4年度までに7区が設置し、令和8年度までにはさらに5区の設置が計画されている。
このような状況の中、都区財政調整の特別区の配分割合について、令和2年度には児童相談所の運営に関する都区の連携・協力を一層円滑に進めていく観点から、特例的な対応として0.1%増の55.1%とし、今後は今回の特例的な対応により変更した分も含め、令和4年度に配分割合のあり方について、改めて協議することとしていた。しかしながら、都区間の財源配分に関して、都区間の見解に隔たりがあることから、協議が整わず、令和5年度都区財政調整に関する条例改正が令和4年度内に成立しなかった。
児童虐待などの様々な問題について、より身近な地域できめ細かな対応を行うためには、基礎的自治体である特別区において児童相談所を設置し、運営することが求められており、そのためには、十分な財源措置が必要である。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 児童相談所設置運営関連経費を基準財政需要額へ算定し、特別区の配分割合を更に引き上げること。
- 2 準備経費の特別交付金への全額算定を行うこと。
3 鉄道連続立体交差事業の一層の推進を求める要望
特別区内においては、朝夕のピーク時間帯に遮断時間が数十分にも及ぶような、いわゆる「開かずの踏切」が数多く存在し、踏切事故の発生による危険性やそれに伴って生ずる列車の遅延、交通渋滞の発生によって道路交通円滑化の大きな妨げとなっているほか、排気ガスによる環境悪化を招いている。また、鉄道により分断された地域では、経済活動や日常生活への影響など、深刻な課題を長年抱え、一体的なまちづくりが進まない状況にもなっている。
こうした状況を改善する最も効果的な事業が、鉄道連続立体交差事業である。
東京都は6路線7箇所で事業を実施し、4路線5箇所を事業候補区間として位置づけ、事業化に向けた調査を行っている。また、区では鉄道連続立体交差事業化について、これまで関係機関との継続的な検討を進めるとともに、地元住民組織等と鉄道連続立体交差事業に併せた総合的な駅周辺のまちづくりについての検討を重ねてきている。
今後、国際化・観光立国の推進を見据え、都市交通の整備促進や防災対応力の強化等、国際観光拠点としての機能充実が広く望まれているところでもある。また、首都圏空港アクセスの速達性・確実性の確保・改善に資する当該事業の早期実現が求められている。
さらに、鉄道立体化事業は、計画から完了まで莫大な事業費と長い期間を要することから、区施行による事業執行は、非常に難しい状況となっている。
これらの趣旨を踏まえ、以下の事項について要望する。
- 1 事業候補区間の具体的課題を解決し、早期事業化を図ること。
- 2 鉄道連続立体交差事業が着実に促進されるよう必要な財源を措置すること。
- 3 鉄道高架化と車庫移転整備は、一体的な鉄道連続立体交差事業として、地域の実状にあった柔軟な財源措置をすること。
- 4 区施行による鉄道立体化事業について、技術的・財政的な支援制度を拡充すること。
4 防犯カメラの維持管理費等に係る町会・自治会等の負担軽減を求める要望
町会や自治会等の地域団体(以下、「町会等」という。)が設置する防犯カメラは、犯罪抑止のための有効な手段として広く認知され、設置が進んでいる。
町会等が設置する防犯カメラについては、令和2年度に防犯カメラの電気料金及び電柱の共架料等の維持管理費の一部補助制度が創設されたものの、依然として町会等の負担が残存しているのが現状である。特に、防犯カメラを設置したことにより発生する維持管理費は、毎年度支出を余儀なくされる固定費となり、町会等の限られた予算を圧迫するものとなっている。
このような中、東京電力パワーグリッド株式会社(以下、「東京電力」という。)は、平成31年4月1日より電柱の共架料を従前の2倍(年間2,400円/基)に値上げをしている。さらに東京電力は、令和5年6月1日から、低圧の電気料金の値上げを行ったところである。民間事業者が営利を目的として使用する場合と町会等の防犯カメラ設置の場合では、使用目的が異なるにも関わらず、物価高騰に乗じた一律に値上げを実施することは看過できない。
町会等では、地域の安全・安心の確保のため防犯カメラの設置を推進し、犯罪抑止や事件の早期解決に貢献しているところであるが、事件等が発生した場合に警察が記録検証等に活用することがほとんどである。このことから、本来、警察、あるいは東京都が防犯カメラを設置することが妥当と考えられる中、町会等が協力しているのが現状である。
また、一部の町会等においては、維持管理等における経費の問題により設置を断念せざるを得ない状況が生じている。町会等の財政事情により、地域の安全性に偏りが生じることは望ましくない。今後も町会等に継続して地域の安全・安心に協力をしていただくため、また、6年間にわたる特別区議会議長会からの要望が軽視され完全な実現に至っていないことから、以下の事項について強く要望する。
- 1 防犯カメラの維持管理費及び設置費については、費用の全額を都が負担すること。なお、共架料の免除が実現されるまでの間、共架料は全額都が負担すること。
- 2 町会等が東京電力及び東日本電信電話株式会社(NTT)の電柱に防犯カメラを設置する場合は共架料を免除するよう、東京都から東京電力及び東日本電信電話株式会社(NTT)に強く申し入れ、共架料の免除を実現させること。
5 教員不足解消に向けた取組の更なる充実を求める要望
文部科学省は、2021年4月の始業日時点で2,558人の教員不足が生じていたと公表した。東京都の公立小学校においても、本年4月時点で約80人の欠員が生じており、教員不足は全国的に深刻な状況にある。
教員不足の原因の一つとしては、学校現場での多忙化・長時間勤務などの過酷な労働環境が背景にある。本年4月に公表した教員の勤務実態調査では、国が定めた月45時間の上限を超えて残業をしていた教員の割合が小学校で64.5%、中学校で77.1%となっており、中学校教諭に至っては36.6%が過労死ラインを超えて働いていることが明らかになった。
また、教員の働き方改革が円滑に進まないこともあり、教員志願者は年々減少傾向となっている。そのため、教員の産休・育休取得や病気休職の場合でも欠員を補充することができず、教員一人で複数のクラスを受け持つ例もあるなど、慢性的な教員不足は教員の多忙化に拍車を掛けている。
こうした中、政府は5月に、質の高い人材を確保するための環境整備について中央教育審議会に諮問した。今後、教員の人材確保に向けた具体的な方策が議論されることになるが、教員の質を確保しつつ、個に応じたきめ細かな教育の充実やこどもと向き合う機会の創出を図るためには、教員の多忙化を解消し、教職員の増員や給与水準の向上、教職調整額の見直しなどの処遇改善が重要である。また、教員に対する負のイメージを無くし、多くの志願者を確保する対策も急務である。
よって、こどもの学びの確保及び学校での教員の働き方改革を促進するため、教員の処遇改善を図るとともに、業務削減や勤務間インターバル制度の導入など、教員不足解消に向けた取組の更なる充実を求める。
6 路上生活者対策事業の充実を求める要望
特別区と東京都は、平成12年度より共同でホームレスの就労自立を目指す路上生活者対策事業を推進しており、緊急一時保護事業、自立支援事業、地域生活移行支援事業及び巡回相談事業など様々な対策を実施してきた。その結果、23区内の路上生活者数については、減少傾向が見られるところであるが、依然として路上生活者が都心部に集中している状況にある。
特に、路上生活者の高齢化や路上生活期間の長期化への対策が求められており、また、解雇や雇い止め等で仕事や安定した居場所を失った方への支援にも早急に取り組む必要がある。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 路上生活者対策は、福祉・医療の面だけでなく、就労・住宅等との連携した対応が必要であり、都として、広範囲に各施策の連携を図った対策を講じつつ、都が主体となって推進すること。また、安定した居所が無くインターネットカフェ等で起居する方に対する施策についても推進すること。
- 2 路上生活者の自立を促すためには、就労支援の実施が必要不可欠であるが、路上生活者は単純労働等の経験しか持たない者も多く、依然として厳しい求職状況にある。これまでも様々な就労支援策は実施されているが、職業スキルの低い路上生活者が就労できる雇用の創出を図ること。
- 3 生活保護法第73条により、路上生活者等居住地がないか、または明らかでないものに係る保護費等については、その4分の1を東京都が負担することとされているが、都においては保護開始後3か月を経過した場合、その費用を区が負担することとされている。この3か月を相当期間延長し、国の負担へとする制度の改正が行われるまでの間は、都が負担すること。
- 4 公園・河川等、国管理者との連携や都有施設の管理を適正に行うこと。
- 5 路上生活者問題の解決に向けた総合的な対策を講じるとともに、都区共同の路上生活者対策事業についても、必要かつ十分な財政支援を行うよう、国に対して強く働きかけること。