○令和5年度東京都の施策及び予算に関する要望活動を実施
8月23日、田中としかね会長(文京区議会議長)をはじめ、役員議長ら6名が都庁を訪問し、要望活動を行いました。
●東京都知事への要望
黒沼靖東京都副知事と面談し、田中会長から東京都知事あての要望書を手渡しました。
はじめに、田中会長から11項目の要望事項について趣旨説明を行い、「いずれの要望事項も特別区にとって、緊急かつ重要な課題であるので、その実現に向け、ご努力いただくようお願いしたい。」と要請しました。
次に、参加した役員議長から要望内容の実現を求めて発言しました。
黒沼副知事からは、「新型コロナウイルス感染症対策については、都としては、都民の命を守ることを最優先に、医療資源を有効に活用し、必要な医療が提供されるよう取組を進めている。8月に、すべての方が適切な診断の下、健康観察などのサービスにアクセスできるよう、「陽性者登録センター」を立ち上げた。今後、社会経済活動が本格化する中、特別区の皆さんと一丸となって、感染拡大防止を着実に進めていきたい。
都区のあり方検討委員会における正式協議の再開については、特別区の区域のあり方について、都と特別区の意見に大きな隔たりがあり、平成23年12月以降、検討が中断している。検討の前提が整っておらず、すぐに再開するのは難しいと考えている。
児童相談所設置に向けた財源措置については、特例的な対応として、特別区の配分割合を令和2年度から0.1%増やし、令和4年度まで55.1%とした。令和5年度財調協議において、この特例的な対応により変更した分も含め、配分割合について、改めて協議するのが、都と区の唯一の合意である。この合意内容に基づき、協議していく。
都庁全体の知恵、特別区議会の皆様のお知恵も結集して困難に立ち向かい、その先に、いかなる危機にも揺らぐことのない真に持続可能な都市を実現していきたい。
本日いただいたご要望については、「「未来の東京」戦略」の推進や来年度予算に向けて、真摯に対応していきたい。今後とも、都政への特別区議会の皆様の御理解と御協力をいただきたい」等の発言がありました。

黒沼東京都副知事に要望書を手渡す田中会長(右から4人目)、木内副会長(右から3人目)、ゆうき会計監事(右から2人目)、木下幹事(左から2人目)、山本幹事(右から1人目)、本多参与(左から1人目)

要望活動の様子
1 子ども医療費助成にかかる財源措置等に関する要望
子どもたちの健やかな成長を支えるためには、保護者への経済的負担軽減は極めて重要である。特別区では、約30年もの間、子ども医療費の助成を行ってきており、現在は、中学校第3学年修了前までの全ての子どもに対して所得制限を設けずに、自己負担なく医療にかかれるよう助成し、安心して子どもを産み育てやすい環境の整備に努めている。
本年1月、東京都は、現在中学生まで実施している医療費助成の対象を来年度から高校生相当年齢まで拡大する方針を示され、このこと自体は大きな前進である。
しかしながら、東京都が示している内容では、一部自己負担や所得制限が導入されている。また、制度開始から3年間は東京都が全額補助を行うが、4年目以降は区市町村が2分の1を負担することとなっており、自治体の財政状況次第では4年目以降に格差が生じる懸念が指摘されている。
この4年目以降の財源等については、東京都と区市町村との間で引き続き協議の場を設けることとなったが、子育て支援や少子化対策の拡充は都民の願いであり、都内のどこでも同水準のサービスを受けられることが重要である。
これらを踏まえ、以下の事項について要望する。
- 1 今般の高校生等の医療費無償化については、事業経費の全額を東京都が負担した上で、一部自己負担や所得制限を導入せずに実施すること。
- 2 各区の財源により所得制限も自己負担もなく実施している中学生までの医療費助成についても、事業経費の全額を東京都が負担すること。
2 子育て支援の拡充を求める要望
厚生労働省が発表した令和3年の出生数は81万1,604人で、6年連続で過去最少を更新した。少子高齢化による人口減少が我が国最大の国難であるとして、その解決を図るべく、令和元年10月から幼児教育・保育の無償化が開始されたが、出生数の減少に歯止めがかかっていない。そうした中、国や自治体が実施する子育て支援策には所得制限が設けられているものが多く、支援の対象から外れてしまう子どもが多くいるのが現状である。
令和3年度に実施された子育て世帯等臨時特別支援事業は児童手当の所得制限に準拠し実施され、都内の多くの児童には支給されなかった。加えて児童手当に関しては、令和4年10月支給分より、所得制限限度額を超える世帯の特例給付が廃止されることが決定している。また、0歳〜2歳の幼保無償化をはじめ、いわゆる高校無償化や大学無償化と呼ばれる各種支援制度のいずれにおいても所得制限が設けられ、そうしたしわ寄せが子どもの進路や将来の可能性を狭めることに繋がりかねない。こうした所得制限の設定により、手当や助成等も含めた総収入額が逆転してしまう不公平な現象が生じており、頑張って働けば働くほど子どもへの給付がなくなってしまうという事態は、働き盛りとされる子育て世帯の就労意欲をそぎ、最終的には、少子化をより一層促進させるおそれもある。
我が国の将来を担う子どもたちにしっかりと予算を割いていくことは、未来に対する投資であり、親の所得にかかわらず、全ての子どもが平等に扱われるべきである。またそうすることが「誰もが子どもを産み育てやすい社会」の形成に繋がり、わが国の長年の課題である出生数の改善にも寄与するものと考える。
よって、以下の事項を要望する。
- 1 児童手当を始め、幼保無償化、高校無償化等の各種子育て支援策に対する所得制限の撤廃や多子世帯に対する支援の充実など、子育て支援を拡充すること。
3 新型コロナウイルス感染症対策の推進を求める要望
新型コロナウイルス感染症については、影響が長期化していることに加え、今後も 感染が再拡大する懸念もあることから、依然として予断を許さない状況が続いている。
特別区においては、区民の生命と健康を守るため、関係機関と連携しながら感染症対策に取り組んでいるところである。また、感染症が収束した後も、区民生活や地域経済等の早期の立て直しを図るために、必要かつ十分な支援を迅速に講じることが求められている。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 地域の医療提供体制を確保するため、新型コロナウイルス感染症患者の受入れの有無にかかわらず、経営状況が悪化した医療機関について、減収に見合った財政支援を行うこと。
- 2 宿泊療養施設の利用を促進すべく、対象者の年齢要件を緩和するとともに、基礎疾患のある方について一律に入所制限するのではなく、個々の症状に応じた柔軟な入所が可能となるよう、利用要件の見直しを行うこと。
- 3 新しい生活様式を踏まえて学校園や公共施設を運営するにあたり、様々な感染症対策が図れるよう、補助金の増額や補助対象経費の拡充を行うとともに、補助制度を継続すること。
- 4 コロナ禍の影響を受けている商店街の店舗経営者や観光関連事業者を始めとした中小企業・小規模事業者に対し、給付制度にとどまることなく中長期的な支援措置を講じるとともに、事業活動の継続に資する支援の更なる充実を図ること。
- 5 新型コロナウイルス新規感染者数の状況、病床使用率、ワクチン接種状況等を見定め、Go To トラベルや Go To Eat などの積極的な経済・観光支援策を講じるよう国に求めること。
- 6 新型コロナウイルス感染症に係る融資の据え置き期間の延長や返済の免除などの更なる支援策の強化を国に求めること。
- 7 新型コロナウイルス感染症対策に伴い必要となる特別の財政需要に対しては、必 要かつ十分な財政措置を講じること。また、地方創生臨時交付金について、今後の 経済状況や感染状況に応じて、予備費の活用を含め、更なる増額を図るとともに、基金への積立て要件の弾力化など、柔軟で弾力的な運用を図るよう国に求めること。
- 8 新たな変異株の出現も予想されるところ、国産ワクチン等の早期開発及び供給に全力で取り組み、社会的不安の解消に努めること。また、国産ワクチンの開発においては、先行ワクチンの普及により、数万人規模の治験を実施することが困難である現状を踏まえ、緊急事態に対応する観点から、条件付き早期承認制度の弾力的な運用を行うよう国に求めること。
- 9 都民がワクチンの4回目接種の目的や有効性・安全性等を理解できるよう、十分に周知・広報を行うこと。
- 10 4回目接種に必要なワクチンについて、各自治体が希望するワクチンを確実に配分するとともに特に、都民の多くがファイザー社ワクチンによる接種を希望している一方で、ファイザー社ワクチンの供給が見合っていないことから、必要な対策を講じるよう国に強く求めること。
- 11 4回目接種の対象者は、60歳以上の者、18歳以上60歳未満で基礎疾患を 有する者、その他重症化リスクが高いと認める者とされているが、医療機関や介護 施設においてクラスターが発生した際、社会生活に大きな影響を与えかねないので、 59歳以下の疾患のない医療従事者および介護施設従事者を対象に加えることを 検討するよう国に求めること。
- 12 海外からの渡航者への検査の徹底等、空港・港湾における水際対策を強化し、適切な検疫体制を継続するよう国に求めること。
4 鉄道連続立体交差事業の一層の推進を求める要望
特別区内においては、朝夕のピーク時間帯に遮断時間が数十分にも及ぶような、いわゆる「開かずの踏切」が数多く存在し、踏切事故の発生による危険性やそれに伴って生ずる列車の遅延、交通渋滞の発生によって道路交通円滑化の大きな妨げとなっているほか、排気ガスによる環境悪化を招いている。また、鉄道により分断された地域では、経済活動や日常生活への影響など、深刻な課題を長年抱え、一体的なまちづくりが進まない状況にもなっている。
こうした状況を改善する最も効果的な事業が、鉄道連続立体交差事業である。
東京都は平成20年6月に7区間を鉄道連続立体交差事業の候補区間と位置づけ て事業化に向けた調査を行っている。また、区では鉄道連続立体交差事業化について、これまで関係機関との継続的な検討を進めるとともに、地元住民組織等と鉄道連続立体交差事業に併せた総合的な駅周辺のまちづくりについての検討を重ねてきている。今後、国際化・観光立国の推進を見据え、都市交通の整備促進や防災対応力の強化等、国際観光拠点としての機能充実が広く望まれているところでもある。また、首都圏空港アクセスの速達性・確実性の確保・改善に資する当該事業の早期推進が求められている。
さらに、鉄道立体化事業は、計画から完了まで莫大な事業費と長い期間を要することから、区施行による事業執行は、非常に難しい状況となっている。
これらの趣旨を踏まえ、以下の事項について要望する。
- 1 事業候補区間の具体的課題を解決し、早期事業化を図ること。
- 2 鉄道連続立体交差事業が着実に促進されるよう必要な財源を措置すること。
- 3 鉄道高架化と車庫移転整備は、一体的な鉄道連続立体交差事業として、地域の実状にあった柔軟な財源措置をすること。
- 4 区施行による鉄道立体化事業について、技術的・財政的な支援制度を拡充すること。
5 都区のあり方検討委員会における正式協議の再開を求める要望
都区制度改革から20年以上が経過しているとともに、このコロナ禍での課題も踏まえ、都と特別区の適正な役割分担などについて、改めて見直す必要がある。住民に身近な特別区が、自主的、自律的な行財政運営をさらに前進させていくためにも、都区間の正式な協議の場である「都区のあり方検討委員会」を再開させ、実質的な協議を行うよう強く要請する。
6 防犯カメラの維持管理費等に係る町会・自治会等の負担軽減を求める要望
町会や自治会等の地域団体(以下「町会等」という。)が設置する防犯カメラは、犯罪抑止のための有効な手段として広く認知され、設置が進んでいる。
町会等が設置する防犯カメラについては、令和2年度に防犯カメラの電気料金及び電柱の共架料等の維持管理費の一部補助制度が創設されたものの、依然として町会等の負担が残存しているのが現状である。特に、防犯カメラを設置したことにより発生する維持管理費は、毎年度支出を余儀なくされる固定費となり、町会等の限られた予算を圧迫するものとなっている。
このような中、東京電力パワーグリッド株式会社(以下「東京電力」という。)は、平成31年4月1日より電柱の共架料を従前の2倍(年間2,400円/基)に値上げをしている。民間事業者が営利を目的として使用する場合と町会等の防犯カメラ設置の場合では、使用目的が異なるにもかかわらず、一律に値上げを実施することは看過できない。
町会等では、地域の安全・安心の確保のため防犯カメラの設置を推進し、犯罪抑止や事件の早期解決に貢献しているところであるが、事件等が発生した場合に警察が記録検証等に活用することがほとんどである。このことから、本来、警察、あるいは東京都が防犯カメラを設置することが妥当と考えられる中、町会等が協力しているのが現状である。
また、一部の町会等においては、維持管理等における経費の問題により設置を断念せざるを得ない状況が生じている。町会等の財政事情により、地域の安全性に偏りが生じることは望ましくない。今後も町会等に継続して地域の安全・安心に協力をしていただくため、また、5年間にわたる特別区議会議長会からの要望が完全な実現に至っていないことから、以下の事項について強く要望する。
- 1 町会等が東京電力及び東日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の電柱に防犯カメラを設置する場合は共架料を免除するよう、東京都から東京電力及びN TTに強く申し入れ、共架料の免除を実現させること。
- 2 防犯カメラの維持管理費及び設置費については、費用の全額を東京都が負担すること。なお、共架料の免除が実現されるまでの間、共架料は全額都が負担すること。
7 デフリンピック東京開催を求める要望
昨年開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、多くの国民に感動を与え、障がい者スポーツへの関心を高めるとともに理解を深めた。これを契機として、2025年デフリンピック夏季大会の東京開催を目指す機運が高まっている。
東京招致が実現すれば、障がい者スポーツに対する関心や理解をさらに深め、障がいを持つ人と持たない人の共生社会構築の礎となり、情報アクセシビリティ環境の整備促進等、大きな社会変革を生み出す機会となることが期待できる。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の施設やノウハウ等のレガシーを有効的に活用できる首都東京は、国際的な知名度があるだけでなく、交通の利便性や安全性の面からも、日本初のデフリンピック開催地として最も適しており、東京都は招致に向けて積極的に取り組むべきである。
よって、2025年デフリンピック夏季大会の東京開催を強く求める。
8 物価高騰に伴う経済的支援に関する要望
一昨年来の新型コロナウイルス感染症の波状的な蔓延により国民生活や地域経済が深刻な影響を受ける中、ロシアのウクライナ侵略に伴い、原油をはじめとする資源・エネルギー価格や食料品など様々な物価が高騰している。さらには急激な円安が追い打ちをかけ、国民生活や事業者の経営に幅広い影響を及ぼしている。ウクライナ情勢は長期化の様相を呈しており、今後の推移によっては、日本経済は戦後最大の危機に陥りかねない。厳しい都民の生活と事業者の経営を守るため、これまで以上に支援の充実が必要である。
これらを踏まえ、以下の事項について要望する。
- 1 小学校・中学校・義務教育学校・保育所・幼稚園・認定こども園・認可外保育施設の給食および介護施設の食事の提供において、物価高騰に伴う保護者・利用者の負担が増加しないよう、増加分を補填すること。
- 2 原油価格・物価高騰等総合緊急対策による、令和4年度に新たに住民税非課税世帯になった世帯への10万円給付や、所得が低い子育て世帯への子ども1人当たり 5万円給付について、都独自の対象者の拡大や支給額の上乗せを行うこと。
- 3 生活に困窮する子どものいる世帯への食の支援拡充をすること。また、生活に困窮する世帯への都内上下水道料金の減免措置、供給企業と連携した電気・ガス料金などの公共料金の負担軽減策、都立の大学・専修学校の授業料の減免・補助および就職活動に必要な諸費用の支援をすること。
- 4 住居確保給付金の支給対象を拡大し、住宅困窮者に対する居住支援の強化を国に求めること。
- 5 公共工事における建築資材の高騰、人件費や輸送コストの上昇に対し、請負金額への上乗せを行うスライド条項を迅速・積極的に適用できるよう最大限柔軟な運用を国に求めること。
- 6 ガソリン価格のトリガー条項の凍結解除を行うよう国に強く求めること。また、トラック運送や貸切バス、タクシー、介護タクシー、自動車運転代行といった道路運送業を営む中小企業と個人事業主に対して、燃料購入費用の一部支援策を講じること。
- 7 持続化給付金や一時支援金・月次支援金の対象にならなかった業種や業績の事業者に対する新たな給付金制度の創設を国に求めること。
9 区立小中学校教員の人材確保と適正配置を求める要望
公立小中学校の教員のなり手不足が全国的な課題となっている。特に昨年度の小学校教員の競争率は、東京都で2.3倍となった他、自治体によっては2倍を下回る状況となり、このような傾向が続けば教員の質の低下にもつながることが懸念される。
また、教職員の人事権は政令指定都市を除いて都道府県にあるため、各自治体が独自に教員を採用することは難しく、都道府県が対策を講じなければ教員の未配置等で学校運営に支障を来たすことも懸念される。
さらに、新型コロナウイルス感染症拡大で進んだGIGAスクール構想によるIC T機器の活用、一人ひとりの特性に合った教育の推進、保護者へのきめ細やかな対応等で、教員の負担は増え続けており、このような状況が続けば学校教育の根幹を揺るがす事態になりかねない。
学校を取り巻く環境が複雑化・多様化する中で、次代を担う子どもたちが充実した学校生活を過ごし、質の高い教育を受けるため、以下の事項について要望する。
- 1 教員の採用抑制を行わず、優秀な人材確保に努めること。
- 2 教員未配置の学校が生じないよう、教員配置基準に基づく教員の配置を確実に行うこと。
- 3 特別に支援が必要な児童・生徒への対応、教員の病気や育児休業等による欠員への対応について、臨時的任用教員や補助的教員の人材確保に努めて、配置への財政措置を講じること。
10 児童相談所設置に向けた財政措置を求める要望
特別区は児童相談所設置に向けた準備を進めており、現在6区において児童相談所の開設に至ったところである。
特別区における児童相談所の設置・運営を円滑に進めるためには、東京都から特別区の役割分担の変更に対応した財源移譲が欠かせない。
都区財政調整の配分割合については、これまで、平成12年度の清掃事業移管、平成19年度の補助金事業の一部移管の際に見直しが行われており、令和2年度には児童相談所の運営に関する都区の連携・協力を一層円滑に進めていく観点から、特例的な対応として0.1%増の55.1%とし、今後は今回の特例的な対応により変更した分も含め、令和4年度に配分割合のあり方について、改めて協議することとしている。
しかしながら、各区は安心・安全なまちづくり、福祉、環境などの区民生活にとって喫緊の課題への対応に加え、新型コロナウイルス感染症による財政需要の増大に直面し、財源確保が困難な状況の中、児童相談所設置に向けた準備が滞ることを懸念している。
このような社会経済状況においても、児童相談所行政の更なる充実が遅延なく図られるためにも、十分な財政措置が必要であり、下記の事項について要望する。
- 1 児童相談所設置運営関連経費の基準財政需要額への算定と配分割合の更なる引き上げを行うこと。
- 2 準備経費の特別交付金への全額算定を行うこと。
11 路上生活者対策事業の充実を求める要望
特別区と東京都は、平成12年度より共同でホームレスの就労自立を目指す路上生活者対策事業を推進しており、緊急一時保護事業、自立支援事業、地域生活移行支援事業及び巡回相談事業など様々な対策を実施してきた。その結果、23区内の路上生活者数については、減少傾向が見られるところである。
しかしながら、路上生活者の高齢化が進むことにより、健康状態の悪化が懸念されることなどに加え、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化していることにより、今後も、解雇や雇い止め等によって仕事や居場所を失った方への支援に取り組む必要があることから、引き続き、路上生活者対策事業の充実に取り組む必要がある。さらに、路上生活者の対策は、福祉・医療だけではなく、就労・住宅等との連携した対応が必要である。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 路上生活者の自立を促すためには、就労支援の実施が必要不可欠であるが、路上生活者は単純労働等の経験しか持たない者も多く、依然として厳しい求職状況にある。これまでも様々な就労支援策は実施されているが、職業スキルの低い路上生活者が就労できる雇用の創出を図ること。
- 2 生活保護法第73条により、路上生活者等居住地がないか、または明らかでない ものに係る保護費等については、その4分の1を都が負担することとされているが、都においては保護開始後3か月を経過した場合、その費用を特別区が負担すること とされている。この3か月を相当期間延長し、国の負担へとする制度の改正が行わ れるまでの間は、都の負担とすること。
- 3 公園・河川等、国管理者との連携や都有施設の管理を適正に行うこと。
- 4 路上生活者問題の解決に向けた総合的な対策を講じるとともに、都区共同の路上生活者対策事業についても、必要かつ十分な財政支援を行うよう、国に対して強く働きかけること。