○令和3年度東京都の施策及び予算に関する要望活動を実施
8月27日、押田まり子会長(中央区議会議長)をはじめ、役員議長及び要望提案区の議長が都庁を訪問し、要望活動を行いました。
●東京都知事への要望
多羅尾光睦東京都副知事と面談し、押田会長から東京都知事あての要望書を手渡しました。
はじめに、押田会長から7項目の要望事項について趣旨説明を行い、「いずれの要望事項も特別区にとって、緊急かつ重要な課題であるので、その実現に向けてご努力いただくようお願いしたい。」と要請しました。
次に、参加した役員議長8名及び要望提案区の議長3名がそれぞれ要望内容の実現を求めて発言しました。
多羅尾副知事からは、「要望の内容は私から知事に伝える。各区議会議長の皆様には、このコロナ禍において、都民の命と健康を守り、生活や経済を支える様々な施策に鋭意取り組まれていることについて、深く感謝申し上げる。本日いただいた要望については、それぞれの区が抱える非常に切実な要望ということで受け止めている。喫緊の課題である新型コロナウイルス対策の感染拡大防止と社会経済活動の両立、またこのほかにも東京には、解決すべき課題が山積している。こうした状況を踏まえながら、ウィズ・コロナ、アフターコロナを見据え、さらに特別区の皆様と連携して取り組んでいくことが非常に重要だと考えている。本日いただいた要望については、真摯に対応していきたい。」等の発言がありました。

多羅尾副知事に要望書を提出

要望内容を説明する押田会長(中央)
1 新型コロナウイルス感染症対策に伴う総合的な支援を求める要望
新型コロナウイルス感染症については、いまだ相当数の新規感染者が確認されており、全国的な感染拡大傾向が見られることから、依然として予断を許さない状況にある。
特別区においては、限られた財源の中で、区民生活への支援、感染拡大の防止や医療提供体制の整備、経済活動の維持・継続、学習環境の整備など、様々な分野における対策を講じているところである。
さらに、今後の感染拡大への備えが必要であり、区民生活の早期の立て直しを図るために必要かつ十分な支援を迅速に講じることが求められている。
また、都内事業者は、感染拡大防止のため、営業の自粛に努めてきたところであるが、経営に対する影響はかつてないほど甚大で事業の継続が困難になっている。
このような難局を乗り越えるためには区民、事業者との協力のもと、総力を結集して感染症防止対策を講じながら、経済社会活動を維持していかなくてはならない。
そのためには、「新しい日常」が定着した社会を実現するための取り組みや手順を示していく一方で、これまでの法制度や事業等の仕組みを大きく転換させる必要がある。
これらを踏まえて、以下の事項について要望する。
1 医療・検査体制等の充実・強化
- (1)病院・診療所における感染症患者受け入れに係る診療報酬の拡充及び経営継続のための経済的支援を国に対して求めること。
- (2)保健所の人的体制強化のため、公衆衛生医師・検査技師・保健師の必要数を確保し、各区に配置するとともに、保健師や栄養士等の専門職の確保及び育成について、各区の取り組みに対し財政措置を含め必要な支援を行うこと。
- (3)PCR検査体制の強化のための支援を行うとともに医療現場における必要物資の安定確保のための対策を講じること。
- (4)東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中に地域で活動する区市町村ボランティア等を対象とした予防接種への補助制度があるが、国民の生命と健康を守るため、感染症対策及び財政支援をさらに充実させること。
2 危機管理体制等の整備
- (1)健康危機管理対応のための資機材について、都の備蓄とともに、各区における備蓄への財政措置を行うこと。また、医療用品事業者や他自治体からの支援に対する受援体制を整備することにより、緊急時に必要な資機材の確保を図ること。
- (2)災害時や健康危機管理事象発生時の医療機関と保健所との連携体制のさらなる強化を図るため、平常時から、都・区・医療機関、3者の連絡・調整のための組織を設置し、緊急時の円滑な連携を担保すること。
- (3)近年、大型な台風や記録的な豪雨等が多発するなど災害が常態化してきている中、新型コロナウイルス感染症の脅威にも対応できる避難所運営が求められている。このことから、既存の避難所の環境整備及び「密」を避けるための新たな避難所確保に要する経費について、自治体において最大限の備えが整えられるよう、財政支援を行うとともに感染症対策を踏まえた避難所運営のあり方について、都民の理解が深まるよう周知方法について必要な対策を講じること。
3 介護事業所への支援
新型コロナウイルスの感染拡大が、介護事業所の経営状況の悪化や介護人材不足に拍車をかけている状況に鑑み、賃貸料や人材確保に係るコストの反映をはじめとした介護報酬の見直し、介護利用者の減少による減収補填、さらにはサージカルマスクやグローブ、消毒液等の衛生用品購入費用の助成など、介護事業の継続に向けた総合的な支援の拡充について、国に働きかけるとともに、さらなる財政措置等の対策を行うこと。
4 保育事業所への支援
認可保育園等の保育料減額措置により保護者の負担軽減を図っているところであるが、区財政への影響はたいへん大きなものとなっている。
今後予測される新型コロナウイルスの第2波、第3波の到来も念頭におき、待機児対策と必要な感染症対策を並行して安定的に実施していくため、財政措置及び施設に対するサージカルマスクやグローブ、消毒液等の衛生用品確保・購入費用助成など、さらなる支援を行うこと。
5 小規模・中小事業者等への支援
- (1)小規模事業者、中小企業への事業継続のための給付金、助成、融資等のさらなる支援の拡充及び手続きの簡素化を図ること。
- (2)都内港湾における船舶関係事業者は、東京の水辺空間の魅力を引き出す一翼を担っている。今般の新型コロナウイルス感染症拡大の状況下においては、感染防止のため、営業の自粛に努めてきたところであるが、その経営への影響はかつてないほど甚大で事業の継続が困難になっていることから、桟橋及び船舶係留に係る水域占用料、海岸保全区域占用料を減免すること。
6 事業者のテレワーク導入促進に向けた支援手続きの簡略・早期化
より多くの事業者が滞りなく円滑にテレワークを導入し、感染症対策と並行して経済社会活動を活発化できるよう、支援制度の充実はもとより、さらなる事業者負担の軽減に向け、申請手続きの簡略・早期化を実現すること。
7 財源措置に関する国への働きかけ
新型コロナウイルス感染症対策に係る積極的かつ継続的な財源措置を講じるよう、引き続き、国に対して強く働きかけること。
2 鉄道連続立体交差事業の一層の推進を求める要望
特別区内においては、朝夕のピーク時間帯に遮断時間が数十分にも及ぶような、いわゆる「開かずの踏切」が数多く存在し、踏切事故の発生による危険性やそれに伴って生ずる列車の遅延、交通渋滞の発生によって道路交通円滑化の大きな妨げとなっているほか、排気ガスによる環境悪化を招いている。また、鉄道により分断された地域では、経済活動や日常生活への影響など、深刻な課題を長年抱え、一体的なまちづくりが進まない状況にもなっている。
こうした状況を改善する最も効果的な事業が、鉄道連続立体交差事業である。
東京都は平成20年6月に7区間(現在は2区間)を鉄道連続立体交差事業の候補区間と位置づけて事業化に向けた調査を行っている。また、区では鉄道連続立体交差事業化について、これまで関係機関との継続的な検討を進めるとともに、地元住民組織等と鉄道連続立体交差事業に併せた総合的な駅周辺のまちづくりについての検討を重ねてきている。
今後、国際化・観光立国の推進を見据え、都市交通の整備促進や防災対応力の強化等、国際観光拠点としての機能充実が広く望まれているところでもあり、首都圏空港アクセスの速達性・確実性の確保・改善に資する当該事業の早期推進が求められている。
また、鉄道立体化事業は、計画から完了まで莫大な事業費と長い期間を要することから、区施行による事業執行は、非常に難しい状況となっている。
これらの趣旨を踏まえ、以下の事項について要望する。
- 1 事業候補区間の具体的課題を解決し、早期事業化を図ること。
- 2 鉄道連続立体交差事業が着実に促進されるよう必要な財源を措置すること。
- 3 鉄道高架化と車庫移転整備は、一体的な鉄道連続立体交差事業として、地域の実状にあった柔軟な財源措置をすること。
- 4 区施行による鉄道立体化事業については、技術的・財政的な支援制度を拡充すること。
3 GIGAスクール構想の実現に向けた環境構築に関する要望
令和元年12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において、「GIGAスクール構想の実現」が打ち出された。
GIGAスクール構想は、多様な子どもたちを誰一人残すことなく公正で個別最適化された学びや創造性を育む学びに寄与するものであり、特別な支援が必要な子どもたちの可能性も大きく広げるものである。
一方で、令和2年4月に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」により、「GIGAスクール構想の加速」が掲げられ、今年度内における児童生徒1人1台端末の配備や高速大容量通信ネットワーク等の整備が急務となっている。
Society5.0時代にふさわしいICT教育の実現及び持続可能な取り組みの推進に向けて、以下のとおり国に対して働きかけることを要望する。
1 環境整備のスケジュール
地域の実情に応じたネットワーク整備を計画的に進めることができるよう、令和3年度以降も財政措置を継続するなど、国が令和2年度末としている整備期限の延長も含め、柔軟な対応を行うこと。
2 1人1台端末の整備
児童生徒1人1台端末の調達に必要な「端末の設定費用」、「端末の保守・保証契約に係る経費」、「セキュリティシステムの導入経費」、「有償のソフトウェアにかかる経費」を補助対象経費とするとともに、端末機の新規整備にかかる補助単価を増額すること。
3 通信ネットワークの整備
高速大容量の通信ネットワーク利用のため、継続的に必要となるインターネット回線の通信費に対する支援を行うこと。
4 構築業務
短期間における1人1台端末の整備や通信ネットワーク構築に必要となる構築支援業務の委託費用を支援すること。
5 端末機の調達
全国規模における大量の調達需要を踏まえ、年度内おいて確実に端末機が調達できるよう、ICT関連事業者に働きかけること。
6 活用できる体制づくり
一人一人の教育的ニーズや習熟度に応じた個別学習など、「1人1台端末」の環境を前提としたSociety5.0時代の学びを実現するための指導体制の構築に向けて、ICT教育人材の配置拡充や教員の研修充実を図るために、必要かつ継続的な支援を行うこと。
7 オンライン家庭学習の教材
臨時休業等の緊急時における学習支援や、不登校の児童生徒に向けた支援を図るため、オンライン学習教材の活用に必要な経費を支援すること。
4 特別区財政調整交付金に関する要望
新型コロナウイルス感染症の影響により、日本経済の急速な悪化が続いている中、特別区は現下の感染拡大の防止対策、中小企業及び商店街に対する支援、さらには、感染の急増を抑える取り組みなど、今後も継続的に対策に取り組んでいく必要がある。また、今後の特別区の財政状況は、税収の減少により、非常に厳しい局面に立たされることが想定される。
これらを踏まえて、以下の事項について要望する。
- 1 令和3年度特別区財政調整交付金については、新型コロナウイルス感染症防止対策、中小企業や商店街に対する支援など区内経済対策、新型コロナウイルス感染症終息後の地域経済活性化に投入する費用について、新たな算定項目の充実を図ること。
- 2 投資的経費に係る工事単価の設定について、臨時的な工事費の高騰に対する変動率の反映のような一時的な対応ではなく、特別区の実態を踏まえたものとなるよう必要な見直しを行うこと。
- 3 都市計画交付金について、都区の事業実態に見合った配分となるよう規模を拡大するとともに、交付率の撤廃・改善等、抜本的な見直しを行うこと。
- 4 特別区の児童相談所設置にあたり、その準備に必要な財源を確実に移譲するとともに児童相談所業務に係る経費について必要十分な財政措置を講ずること。
5 地域交通の不便解消に向けたコミュニティ交通整備への財政支援を求める要望
東京都の人口動向では、2030年に65歳以上の高齢者の占める割合が約25%(4人に1人の割合)に達すると予測されており、高齢者の移動における不便解消は重要な課題である。併せて、高齢運転者の交通事故対策を推進するためには、免許返上に代わる移動手段の確保も必要となる。
一方、東京2020大会後も継続した魅力にあふれる観光都市東京を実現するためには、地域交通を利用した回遊性向上が求められる。
同時に、特別区単位で取り組むコミュニティ交通の整備は交通不便地域の解消や回遊性向上に繋がるため有効な施策となる。
これらを踏まえて、以下の事項について要望する。
- 1 コミュニティ交通の運営開始に向けた整備費用を財政支援すること。
- 2 コミュニティ交通を運営する自治体や委託先に対して、一定条件のもとに運用経費の一部を補助すること。
6 防犯カメラの維持管理費等に係る町会・自治会等の負担軽減を求める要望
町会や自治会等の地域団体(以下、「町会等」という。)が設置する防犯カメラは、犯罪抑止のための有効な手段として広く認知され、設置が進んでいる。
町会等が設置する防犯カメラについては、今年度より新たに防犯カメラの電気料金及び電柱の共架料等の維持管理費の一部補助制度が創設されたものの、依然として町会等の負担が残存しているのが現状である。特に、防犯カメラを設置したことにより発生する維持管理費は、毎年度支出を余儀なくされる固定費となり、町会等の限られた予算を圧迫するものとなっている。
このような中、東京電力パワーグリッド株式会社(以下、「東京電力」という。)は、平成31年4月1日より電柱の共架料を従前の2倍(年間2,400円/基)に値上げをしている。民間事業者が営利を目的として使用する場合と町会等の防犯カメラ設置の場合では、使用目的が異なるにも関わらず、一律に値上げを実施することは看過できない。
町会等では、地域の安全・安心の確保のため防犯カメラの設置を推進し、犯罪抑止や事件の早期解決に貢献しているところであるが、事件等が発生した場合に警察が記録検証等に活用することがほとんどである。このことから、本来、警察、あるいは東京都が防犯カメラを設置することが妥当と考えられる中、町会等が協力しているのが現状である。
また、一部の町会等においては、維持管理等における経費の問題により設置を断念せざるを得ない状況が生じている。町会等の財政事情により、地域の安全性に偏りが生じることは望ましくない。今後も町会等に継続して地域の安全・安心に協力をしていただくため、また、三年間にわたる特別区議会議長会からの要望が完全な実現に至っていないことから、以下の事項について強く要望する。
- 1 町会等が東京電力及び東日本電信電話株式会社(NTT)の電柱に防犯カメラを設置する場合は共架料を免除するよう、東京都から東京電力及び東日本電信電話株式会社(NTT)に申し入れ、共架料の免除を実現させること。
- 2 防犯カメラの維持管理費及び設置費については、費用の全額を都が負担すること。
なお、共架料の免除が実現されるまでの間、共架料は全額都が負担すること。
7 路上生活者対策事業の充実を求める要望
特別区と東京都は、平成12年度より共同でホームレスの就労自立を目指す路上生活者対策事業を推進しており、緊急一時保護事業、自立支援事業、地域生活移行支援事業及び巡回相談事業など様々な対策を実施してきた。その結果、23区内の路上生活者数については、減少傾向が見られるところである。
しかしながら、路上生活者の高齢化が進み、各種疾患への罹患が懸念されるとともに、路上生活者の中には、刑余者や知的障害を有する等、対応に困難な事例も増えている。
また、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、解雇や雇い止めによって仕事を失う人が増えているほか、ネットカフェなどの休業で居場所を失う人の増加も懸念されている。さらに、ホームレスの都心部への流入が依然として多い状況であることから、引き続き、路上生活者対策事業の充実に取り組む必要がある。
よって、以下の事項について要望する。
- 1 路上生活者の自立を促すためには、就労支援の実施が必要不可欠であるが、路上生活者は単純労働等の経験しか持たない者も多く、依然として厳しい求職状況にある。これまでも様々な就労支援策は実施されているが、職業スキルの低い路上生活者が就労できる雇用の創出を図ること。
- 2 生活保護法第73条により、路上生活者等居住地がないか、または明らかでないものに係る保護費等については、その4分の1を都が負担することとされているが、都においては保護開始後3か月を経過した場合、その費用を区が負担することとされている。この3か月を相当期間延長し、国の負担へとする制度の改正が行われるまでの間は、都の負担とすること。
- 3 都が実施している「要保護者等に対する応急援護事業」の補助率を現行の2分の1から10分の10へ引き上げること。
- 4 公園・河川等、国管理者との連携や都有施設の管理を適正に行うこと。
- 5 路上生活者問題の解決に向けた総合的な対策を講じるとともに、都区共同の路上生活者対策事業についても、必要かつ十分な財源措置を行うよう、国に対して強く働きかけること。